英語のビジネスメールの書き出しは、できるだけシンプルにまとめましょう。日本語は意味を持たない言葉を盛り込むことで丁寧さが増す傾向がありますが、英語は逆です。日本語特有の構文をそのまま英語に直すと、無駄に長くwordyな文となり、メッセージが相手の頭にスムーズに入らなくなります。
1. 日本語特有の「…なので、…する」構文を直訳しない
日本語に特徴的な思考の流れに、「…なので、…する」、「…するといけないので、…する」というパターンがあります。
筆者は、このパターンがword-for-wordで英訳されているのをよく目にします。しかし、英語スピーカーは、例外的な状況を除き、このような流れで考えないので、「…なので、…する」の文法を英語メールで再現すると、英語スピーカーが理解しにくい文章になります。
日本語のメールの書き出しには「…なので、…します」、「…なので、メールを差し上げています」というパターンが頻繁に使用されますが、英語のメールの書き出しにこのパターンの直訳を用いると、不自然な文章になります。
<意味が伝わりにくい英訳1>
今回新規症例を10件登録しましたので、連絡申し上げます。
Since ten new cases are newly enrolled this time, we would like to let you know.
We would like to let you know because ten new cases have newly been enrolled.
<自然な英訳>
This is to let you know that we have recently enrolled ten new cases (for XXX).
I am writing to let you know that ten new cases have recently been enrolled (for XXX).
<意味が伝わりにくい英訳2>
周りのお客様の迷惑となりますので、車内での携帯電話による通話はご遠慮願います。
Please refrain from speaking on your phone on the train because it may cause trouble between passengers (筆者が実際に目にした英訳を少し編集しています).
* 英語スピーカーの多くが、この英訳に使用されている“it”で混乱します。 また、”trouble between passengers”は誤解を招く不適切な表現です。
<自然な英訳>
Please refrain from speaking on your phone on the train. Being quiet on public transport is an expression and embodiment of courtesy for others (in Japan).
2. “I/We would like to” の使用に注意する
日本語から英訳されたメールには “I/We would like to” が頻繁に使用されています。
日本の学校では“I/We would like to”が「丁寧な表現」と習うので、この表現を使用している書き手は相手に失礼のない文章を書こうとしているのだということが、日本人には分かります。
“I/We would like to…”が丁寧な表現である、という説明は基本的には間違っていないのですが、どのような言語にも文法では説明できない微妙なニュアンスがあり、英語の“I/We would like to”も例外ではありません。実はあまり日本人には知られていないのですが、この表現は、使い方によっては「上から目線」に聞こえます。
特に、相手に何かをお願いする際に使用する英語の “I/We would like you to” は、日本人が想像する「丁寧な表現」でない場合がほとんどだと筆者は感じています。例えば、ゲストに送るメッセージに、“We would like you to come to XXX at 13:00.”と書くのは非常に失礼です。また、“We would like to ask you to do…”は、文法的には正しいのかもしれませんが、ネイティブスピーカーには不自然に見え(聞こえ)ます。