英語でメールを書くことは、日本人にとってさほど珍しい作業ではなくなりました。
AI翻訳が日々発展しているので、便利なツールを使えば日本語で書いた文章を一瞬で英語に変換できます。
確かに、AIを使えば日本語と英語という二言語間の「変換」はできるのですが、筆者が日常的に目にする(恐らくAIを使って日本語の文章を基に生成した)英語のメールには、不自然な表現が不自然な文脈で使用されています。
AIツールを使って日本語の原文を基に英語メールを作成する場合は、「アルファベットで書かれた日本語」にならないよう、注意が必要です。
日本人が書く英語メールでよく見かける不自然な表現の例をいくつか紹介します。
1. お忙しいところ恐縮ですが…
英訳は、“I understand you are busy, but…”となります。
誤訳ではないのですが、この表現は日本語と同じ感覚で使用しない方が良いでしょう。
相手を「忙しい」とする表現は、日本の文化では相手を尊重することとなるので、どの状況でも気軽に使えます。
一方、英語では文脈次第で不快にとられる可能性があるので注意が必要です。
筆者の暮らすオーストラリアをはじめ、英語圏の国々では、周囲から“busy”と表現される人=効率が良くない人、余裕がない人、と考えられる場合があります。日本でもこのように受け取られる場合はありますが、受け取られるシーンやタイミングが西洋文化とは異なります。
英語の“I understand you are busy, but…”は相手のレスポンスが遅いので失礼にならないように催促する場合によく使用されます。
そのため、英語で“I understand you are busy, but…”と思わず書きたくなった時には、この表現が文脈に適しているか、相手に不快な思いをさせる可能性がないかを一考する必要があります。
2. 「が」
日本語では、逆接、順接を問わず「が」が頻繁に使用されます。
実は、日本人が書いた日本語を日本人が読む場合でも、逆接以外の目的で接続助詞の「が」を使用するのは避けるのが、文筆業に携わる人々の間では常識です。
「が」を多用すると、文の論理構造が破綻するので、書き手も読み手も「漠然と、何となく分かった」状態になってしまいます。
日本人同士のコミュニケーションでは、互いの理解を意図的に「何となく分かった」状態に導き物事を敢えて曖昧にすることがよくあるのですが、英語のコミュニケーションでこのようなアプローチが用いられるのは、非常に特殊な状況に限られます。
AIツールで日本語から翻訳された英語では、「が」が “but” になっていることが多く、文が支離滅裂になっています。
「ご予約いただいたフライトですが、搭乗時間が変更となりました。」の直訳 “You have booked a flight, but the boarding time has been changed.” は、確かに英語の文法に従って単語が並べられて生成された文ではあるのですが、ネイティブスピーカーには奇妙に聞こえます。
「以上、簡潔ではありますがご報告させていただきます。」の直訳も同様です。
この表現に対応する一文をどうしても英文メールに入れたい場合は、完全に別の言葉で文脈に合わせて書き直す必要があります。
3. 突然のメールにて失礼いたします
日本語のメールで頻繁に使用される「突然のメールにて失礼いたします」という表現は、過去の記事でも説明したとおり、英語に直訳しない方が良いでしょう。