AI翻訳は近年目覚ましい発展を遂げており、コスト削減と効率化を目指す各社が積極的に取り入れています。
文法構造や文化背景が似ている言語ペアであれば、かなり自然な翻訳を瞬時に生成できるので、人件費や作業に要する時間を大幅に削減できる可能性があります。
しかし、日本語と英語は、文法構造だけでなく言語が使用される文化背景も大きく異なる言語なので、この言語ペアでAI翻訳を使用する場合は注意が必要です。
自然なコミュニケーション
AIで日本語から翻訳された英語には文法ミスがありませんが、文脈や文化背景を踏まえていないので、文章が無機質または不自然になっていることがよくあります。
ほとんどの場合、日本人が日常的に使用している表現が英語の文法とアルファベットを用いて書き換えられているだけなので、非常に「日本語っぽい英語」になっています。
事実が伝えられるなら不自然な英語でも構わないという場合にはAI翻訳でコストを大幅に下げられますが、個人に向けて送信されたメールの文章が不自然だと受信者が不信感を抱く恐れがあります。
しかも、不自然な英語で書かれたメッセージは詐欺のような印象を与える可能性があります。近年はインターネットを利用した詐欺が世界中で増加しており、筆者が暮らすオーストラリアでも、銀行や政府から頻繁に注意喚起のメッセージが発信されています。このような注意喚起のメッセージの多くには、不自然な英語で書かれたメッセージは詐欺の可能性があるといった内容が記載されています。
違和感があるAI翻訳の例
筆者が最近実際に目にした日本語をAI翻訳ツールで英訳した例を以下に挙げます。
ご到着までにオンライン・チェックインを下記URLよりお願いします。当日はQRコードでスムーズにチェックインができる便利なサービスです。
Please check in online using the URL below before your arrival. This is a convenient service that allows you to check in smoothly on the day using a QR code.
上記の例では確かに原文の一語一句が正確に英語に変換されていますが、英語圏ではまず目にしない不自然な文になっています。しかも、誤解を招く表現になっている点に注意が必要です。誤解については後述します。
同じメッセージを自然な英語で書いた例
Online check-in is recommended for a seamless guest experience. Click the URL below to generate your QR code. Upon arrival, you can check in simply by scanning the code.
英語スピーカーが自然に理解できる英語を書く際に、日本語で考えた文章を一語一句英語に置き換える必要はありません。上記のシーンでは、「スムーズにチェックインができる便利なサービスです」の直訳は不要です。
では、上述した誤解について以下で解説します。
“Please check in online using the URL below before your arrival.”と書くと、「宿泊客は必ず事前にオンラインでチェックインしなくてはならない」と理解される可能性が高くなります。しかも、この表現ではオンライン・チェックインが必須のように読めるのですが、本当に必須なのかどうかが不明瞭で、オンラインでチェックインできない(したくない)利用者が不安になります。
到着前に必ずオンラインでチェックインしないと宿泊できないホテルであれば、“Please check in online using the URL below before your arrival.”という曖昧な表現を使用するのではなく、“All guests are required to check in online before arrival.”と明確に書く必要があります。