今回も引き続き英語でビジネスメールを書く際の基本的な注意点を説明します。
件名と書き出しについては前回までの投稿で説明したので、今回は本文と結びに進みます。
1. 簡潔な文章を心掛ける
英語を書く際は、電子メールに限らず簡潔な文章を常に心掛けましょう。
日本語で文章を考えると、延々と続く長い一文を無意識に書いてしまいがちです。筆者が英訳を依頼された日本語の文章の中には、A4サイズにフォント10ほどで7~8行にわたって一文が書かれ、段落がその一文で完結しているものがありました。このような文をword-for-wordで訳してしまうと、日本人にしか理解できない不思議な英語になってしまいます。
また、日本人独特の文の始め方を英語にそのまま書き換えるのも控えた方が良いでしょう。筆者が頻繁に目にする非常に日本語らしい英文は、“Regarding…”で文が始まっています。
<英語ネイティブが理解に苦しむ文例>
Regarding the meeting scheduled for 20 November, please allow us to make some adjustments in advance.
<英語ネイティブが理解しやすい文例>
Would you mind if we made some changes to the [agenda/participants/venue] for the meeting on 20 November?
2. 日本語独特の表現を直訳しない
英語でメールを書く際は、日本語独特の表現を直訳しないよう気を付ける必要があります。辞書で見つけた言葉をそのまま英文に組み込むのではなく、日本語で考えたメッセージを英語でゼロから再構築すると、自然な文章に仕上がります。
筆者が頻繁に目にする分かりにくい英訳には、以下に挙げる言葉の直訳が入っています。
- 対応 – respond
- 担当 – person responsible
- 順次 – in order
- 調整 – adjustment
また、MAZ Translationが得意とする医療分野の英訳では、「…件の症例にAAの経口投与を実施した」が“The oral administration of AA was performed for XX cases”といった感じに訳されているのをたまに目にします。翻訳ではなく最初から英語で考えた場合には絶対に出てこない文の構成なので、英語スピーカーはスムーズに理解できません。
さらに、英語を書くときは不要な「申し訳ございません」が紛れ込まないよう気を付ける必要があります。このようにアドバイスすると、「英語ネイティブには絶対に謝ってはいけない」と極論に至る方がたまにいますが、そういう意味ではありません。常識的に、自分が悪い時には謝った方が良好な人間関係を築けます。
ここで筆者が伝えたいのは、例えば、書き手に過失がない状況で、「申し訳ございませんが、ご質問への回答にはお時間を頂戴できますか?」という日本語が“We are sorry, but can you give us some time to address your question?”という英語に置き換わると、読み手が違和感を覚えるということです。もし、書き手側が事前に「あらゆる質問に即時回答します」と約束していた場合は “Thank you for your question. Due to xxx, it will take longer than usual for us to address your question. We sincerely apologise for the inconvenience.”といった感じの英語が自然です。
3. 結びもシンプルに
英語のビジネスメールでは、結びもシンプルにするのが無難です。
広く使われている表現で十分ですが、相手に感謝の気持ちを伝えたい時は、“Thank you again for…”と、既に一度お礼を伝えた内容を別の言葉で繰り返すと好印象です。
<Thank you again…の例>
- Thank you again for your time today.
- Thank you again for your help.
- Thank you again for this opportunity.
なお、日本人が英語のビジネスメールでよく使う表現で筆者が気になっているものに、以下があります。
- Thank you for your cooperation.
- Thank you in advance.
(1)の例は恐らく書き手が“cooperation”と“collaboration”を混同したために出来上がった英文だと筆者は察します。“Cooperation”という言葉には、書き手と読み手の間に上下関係があることを示唆します。つまり、立場が上の書き手に達成したい目標があり、立場が下である読み手の力を借りている状況です。また、(2)の例は読み手がアクションを起こすことを想定した結びなので、読み手が言葉に敏感な方だと、「必ずやってくれるよね」というプレッシャーを感じてしまう恐れがあります。