翻訳家は世間で有名になることで、仕事がしにくくなる職業かもしれません。
近年は、ちょっと英語ができれば副業の翻訳でガッツリ稼げる、といったメッセージがオンラインを中心に飛び交っていますが、この様な空き時間に気軽にできる類の作業は、翻訳家の仕事ではありません。
翻訳家は、専門知識と専門スキルを備えたプロフェッショナルです。
プロフェッショナルといえども、過去の投稿でも説明した通り、翻訳の能力や知識を可視化された指標で測ることは難しいため、医師、弁護士、会計士といった他のプロフェッショナルとは異なり、翻訳家と非翻訳家の間に明確な線引きをする資格はありません。
しかも、稼いでいる翻訳家のほとんどがフリーランスのため、平均年収も謎です。ネット上で拡散している翻訳家の平均年収は全て、憶測ベースか、ごく限られた一部のサンプルから集めた自己申告に基づくアンケート結果の集計結果です。
そのため翻訳家は、国家試験難易度ランキングや高収入の職業ランキングにも登場しません。
因みに、通訳案内士(全国通訳案内士)は国家資格ですが、通訳案内士を取得するための知識やスキルと翻訳に必要な知識やスキルの間に共通点はあまりありません。Dr. 会社員はこの資格を持っているので断言できます。
よって、翻訳家はひっそりと目立たない職業であるため、世間でのステータスが低めです。
これに不満を抱いている世界各地の業界団体は、翻訳者や通訳者の地位向上のために懸命に活動を繰り広げています。
しかし、Dr. 会社員は、スキルのある翻訳家ほど有名にならない方が幸せになれる可能性がある、と思っています。
理由を説明します。
目次
翻訳に集中できる
翻訳家として生計を立てている人は、基本的に翻訳をしていることが好きです。
翻訳の仕事には非常に高い集中力が求められるので、翻訳家の多くは作業中に邪魔されることを非常に嫌がります。
翻訳という職業がさまざまな媒体で儲かる職業として紹介されると、余計な注目を浴び、不要な情報を大量に受け取ることになります。
個人情報を簡単に電子媒体で授受できる時代となったため、人々の情報は常に何らかの形で漏洩しています。
よって、「儲かる」と世間で認知されている職業についている人は、クレジットカードや金融商品などの売り込みメッセージやそれらに見せかけた詐欺メールを大量に受け取ることになります。
不要な情報を目にする機会が多くなると、無駄になる時間が増えます。
Dr. 会社員もPhDを取った頃から、大学のメールアドレスに大量の迷惑メールが届きました。
最近はPhD人口が激増しているため、雇用側と求職側の需給が一致せず、貧困ラインぎりぎりで生活しているPhDもかなりいるのですが、一度世間で共有されたステレオタイプは根強い様です。
また、メディアでの露出が増えた翻訳家は、翻訳と関係のない内容でコミュニケーションを取らねばならなくなります。
特に、英語を扱う翻訳者がメディアでの露出を高めると悲劇に陥る可能性があります。
それは、鬼の首を取ったように興奮した一部の日本人から、誤訳の指摘を頻繁に受けることになるからです。
この様に、無益な情報が身の回りに溢れると気が散ります。
有名になると支出が増える
ステータスの高い職業として世間に知られている職業に就いている人は、見た目を維持するプレッシャーを追うことになります。
弁護士、企業戦略コンサルタント、大学教員、医師といった職業に付いている人の多くは、世間体を維持するために多額の支出をしています。
一方、翻訳家は上記のようなステータスとは無縁です。
基本的に一人で作業に取り組んでいるので、どんな格好をしていようが、どこのナンバーを付けたどんな車に乗っていようが、どの住所に住もうが、全く気になりません。
本人の勝手です。
仕事に本当に必要なものにだけ集中して投資でき、無駄な消費は抑えられることは、翻訳家でいることの最大のメリットの一つです。
まとめ
本投稿では、翻訳家はスキルがあればあるほど、有名にならない方が幸せになれる可能性が高い理由を説明しました。
生計を立てていけるだけの翻訳には非常に高度な知識とスキルが必要です。
その一方で、同水準の知識やスキルが求められる他の職業と比較すると、謎が多く非常に目立たない職業であるため、無駄な情報に曝される確率や無駄な出費を効率的に抑えることができます。
雑念に捕らわれることなく、好きな仕事に集中できる翻訳家は幸せです。
負け犬の遠吠えかって?そうかもしれませんね。