そこらじゅうで見つかる訳文をよーく読むと、「翻訳者が原文を読めているのは分かるが、訳文が何だか変」という翻訳がたくさんあります。
この傾向は、英語から日本語への翻訳で顕著にみられます。
ひょっとしたら英語以外の言語から日本語への翻訳でも同じなのかもしれません。
Dr. 会社員は英語と日本語以外は仕事になるレベルで読み書きできないので、本ブログでは主に日本語と英語の言語ペアでの翻訳について、自分が感じたことを書いています。
Dr. 会社員はある専門分野の日本語から英語への翻訳を主に受注していますが、時々英語から日本語への翻訳も受注します。
チェックの仕事は基本的に受けませんが、ごく稀に受けることがあります。
200件に一回程度の頻度でしょうか。
この「極めて稀」なチェックの仕事を通して目にする日本語訳、という限られたサンプル内であっても、頻度の高い珍訳があります。
目次
無駄な言葉が入っている
日本語訳で非常によく目にするパターンは、これです。
原文に書かれていない
無駄な言葉が入っている
よく見かけるのは、以下の言葉です
「ついては」
「関しては」
以下のような英語の原文があるとします。
This document describes how to use the device.
この日本語訳が何故か、以下のようになっていることがよくあります。
本文書では、
デバイスの使用方法について説明します。
日本人には、文章を書く際に「ついては」、「関しては」を連発する癖がある人が割といます。
日記や友人へのメールなど、個人的な文章であれば本人が好きなように書けば良いでしょう。
しかし、小説等エンターテインメント性のある文章を除き、プロフェッショナルな文章を書く場合は、こういった癖に注意する必要があります。
無駄な言葉が多い文章は、クドい印象を読者に与えます。
本文書では、
デバイスの使用方法を説明します
で、十分です。
「~たり、~たり」の誤用
日本語訳では、「~たり、~たり」が正しく使用されていないケースを非常によく目にします。
これは、Microsoft Wordを使っていれば文章校正で必ず指摘してもらえる類の表記ミスです。
以下のような日本語があるとします。
沖縄では、
パラセイリングをしたり、
スキューバダイビングをして
楽しむ予定です。
この文には文法上の問題があります。
前項と同様に、個人的な文章であれば、この程度の誤用があっても読み手は「ああ、間違ってるな」と思うだけで、わざわざ指摘するようなことはしないでしょう。
しかし、プロの文章では、これはダメな例です。
翻訳のトライアルや実際の納品物でこういう日本語を書くと、仕事がもらえなくなります。
正しい書き方は、以下の通りです。
沖縄では、
パラセイリングをしたり、
スキューバダイビングをしたりして
楽しむ予定です。
「したりして」という言い回しがクドくて気になるのであれば、「たり」を使わない文に書き換えれば良いのです。
基本的に、「たり」を使うと文が無駄に長くなるので、Dr. 会社員はあまり使わないようにしています。
尊敬語や謙譲語の不適切な使用
日本語の尊敬語や謙譲語は、面倒な表現です。
場面にピッタリの使い方ができれば美しい文が仕上がりますが、無理して使うと滑稽になるだけです。
基本的には、この表現で間違いないという強い確信が持てない限り、日本語訳では尊敬語や謙譲語は極力避けるべきでしょう。
Dr. 会社員は、VIPクライアントに向けた英文で、「Please note…」から始まる表現が、「ご承知おきください」と和訳されているのを何度か目にしたことがあります。
文法的な間違いではないのですが、立場が上の人に「ご承知おきください」は、ちょっと無理があるかな、とDr. 会社員は思います。
これは営業職に就いたことのある人なら、良く理解できる問題かと思います。
あと、「Please note」が何故か
「お見知りおきください」
となっている和訳も目にしたことがあります。
これは「お知りおきください」と言いたかったのかな、と思いますが、「お知りおきください」はどんな場面でも使わない方が良いと思います。
ネットでは使っている人がいますが、これは恐らく正しい日本語ではありません。
しかも、響きが変です。
まとめ
今回の投稿では、原文が正確に解釈できていても、日本語がおかしなせいで二流の和訳に仕上がっている例をいくつか紹介しました。
翻訳を手掛ける上で、原文が正確に読めることは大前提です。
そこからさらに進んで翻訳の品質を左右する決定的な要素は、訳文の美しさです。