翻訳者になりたいのであれば、語学力を気にする前に、母語で文章が書けるかどうかを気にした方が良いと思います。
日本人の場合でしたら、日本語で文章が書けるかどうか、ということです。
翻訳の仕事についての情報のほとんどが、外国語の運用能力にばかり触れています。
「英語力を活かした職業」というテーマでも、翻訳は常に紹介されます。
しかし、翻訳は実際、「語学を活かす」というよりは「言葉の運用能力を活かす仕事」です。
語学力と言葉の運用能力は同義ではありません。
目次
TOEICで脱線
翻訳者を目指す上でTOEIC等の語学検定の点数にこだわると、目標に向かうレールから脱線します。
特に英語と日本語のペアでは、「私のTOEICは900点ですが、翻訳者になれますか?」と質問する人や、「翻訳者を目指すならTOEIC最低800点は必要」という目安を提示する人が後を絶ちません。
確かに、日本の翻訳会社は応募者に何故かTOEICの点数を尋ねます。
翻訳スキルと関係なくても尋ねます。
日本の翻訳会社に応募するためにTOEICで高得点を取っておく、という目的であれば、TOEICを受験する意味があるのかもしれません。
しかし、TOEICの点数は翻訳にほとんど関係ないのが現実です。
翻訳会社がTOEICの点数を尋ねることを阻止することはできないので、この点についてはもう、「こういうもの」と割り切るしかありません。
Dr. 会社員は翻訳の取引先候補に声をかける際にTOEICの点数を示したことはありません。
翻訳者は、TOEICの点数が高かろうが低かろうが、翻訳ができさえすれば良いのです。
これは、実際に翻訳の仕事で生計を立てている人なら全員分かっていることです。
日本語が書けない翻訳者
英語と日本語のペアでは特に、英語検定の点数が高く日本語が書けない人が激安翻訳市場に続々と参入しています。
翻訳が「できる」という自己評価があるのに、激安翻訳でしか仕事が受けられない場合、あるいはどこの翻訳会社からも契約してもらえない場合は、日本語での文章力を見直すことで活路が見出せるかもしれません。
英語検定の点数と日本語の記述力には、相関がありません。
まとめ
今回の投稿では、文章が書けなければ翻訳はできない、という話をしました。
当然の話なのですが、意外に盲点となっている気がします。
翻訳では、自分だけが読むための文章ではなく、他人が読んで分かる、商品になる文章を書く能力が必要です。