翻訳の仕事、取引先を選ぶ基準

翻訳の仕事、取引先を選ぶ基準

フリーランスの翻訳者として生きていく上で避けられないのが、取引先選びです。

フリーランスとしての経験を積み、翻訳の依頼が発生する段階から案件のクローズに至るまで翻訳作業全体の流れが分かってきたら、個人や法人と直接取引することも徐々にできるようになるとは思いますが、最初の数年は翻訳会社に登録して案件を受注するのが一般的かと思います。

経験を積んだ翻訳者であっても、営業活動したりカスタマーサービスを提供したりする手間はすべて翻訳会社にお願いしたい、という人はたくさんいます。

商いに理不尽なクレームはつきもので、もちろん翻訳者がエラーを犯すこともありますが、どんなに誠意を尽くして翻訳を納品しても、依頼人(ソースクライアント)の気に入らなければ、残念ながらクレームが上がってきます。

こういう時に盾になってくれるありがたい存在が翻訳会社、とDr. 会社員は思っています。

翻訳会社から案件を受注するとマージンが取られるという考えもありますが、Dr. 会社員個人としては、翻訳以外の作業をほとんどやってくれる翻訳会社に頭が上がりません。

そういうわけで、フリーランスの翻訳者にとって翻訳会社は運命共同体

慎重に選択する
必要があります

今回の投稿では、Dr. 会社員自身が取引先を選ぶ際の基準を紹介します。


支払能力

支払能力

当然すぎる要素なのですが、翻訳料を払ってくれる会社と取引しましょう。

支払が大幅に遅れる会社も要注意です。

翻訳料不払いで悪名高い会社の情報ははネットでかなり共有されているので、契約に至る前に可能な限りリサーチすることで悲劇を免れることができます。

また、新しい取引先から大型案件を引き受けるのも控えることが賢明でしょう。

何が起こるか分かりません。


単価の設定方法

単価の設定方法

基本の単価と急ぎの案件用の単価が常識的なレベルで固定している会社を選ぶことをお勧めします。

欲を言えば、定期的に単価を見直してくれて、引き上げも考慮してくれる所が理想です。

単価下限は以下の水準でしょうか。

英語から日本語:
7円/原文1ワード
(5円/1ワードを切る所が増えていますが
腕の良い翻訳者は
確保できていないと思います)

日本語から英語:
4.5円/原文1字

Dr. 会社員が個人的に絶対にお薦めしないのはこれです。

入札形式

翻訳料を限界まで引き下げた上で、最高の翻訳を納品するモチベーションを維持できる翻訳者は、まずいません。

入札形式の翻訳会社は高確率で微妙なフィードバックをくれますが、上記の様な事情でチェッカーの質も確保できていないのでは、と思います。


フィードバックの質

フィードバックの質

レベルの高いフィードバックをくれる取引先に出会ったら、全力で大事にしましょう。

翻訳会社は千差万別で、納品後はほぼ沈黙、という所もあれば、積極的にフィードバックをくれる所もあります。

フリーランス翻訳者は基本的に一匹狼で作業しているため、客観的な評価をもらえるのは貴重な機会です。

とはいえ、フィードバックにも質の良し悪しがあります。

基本的には、もらったフィードバックに目を通して、直観的に嫌な気分になる所とは徐々にフェードアウトするのが、気分良く仕事を続けるコツでしょう。

自分が本当に変な翻訳を納品している場合は、厳しいフィードバックであっても涙を呑んで受け入れるべきですが、翻訳者間の足の引っ張り合いを助長するような非生産的なフィードバックを送ってくるチェッカー(会社)は残念ながら存在します。

以下の様なフィードバックは、翻訳者にとってのプラスの要素が少ないと言えるでしょう。

  1. 翻訳文が採点されている
  2. チェッカーの好みで無意味な編集が大量に加えられている

1. は翻訳者に失礼です。

失礼なフィードバックを「厳しい評価」と謙虚に捉えている翻訳者もいますが、違います。

Dr. 会社員が実際にその場にいたら、その謙虚な翻訳者に

目を覚ませ!!

と声をかけると思います。

2. は時間の無駄です。

実は、

プロのライターが書いた文章でも
誤字脱字は(それなりに)あります

そのために校正(校閲)の仕事が存在するのです。

Dr. 会社員は新聞記者の仕事や書籍の校正の仕事をしたことがあるので、上記は現場で確認済みです。

しかも、報道機関の多くでは人間の校正者の目に触れる前に、校正用ソフトウェアを使って一次校正までします。

修正が必要と考えられる箇所があった場合、書いた人に確認の依頼が送られます。

原稿が採点されることはありません。

また、個々のエラーを取り上げ、記者や作家個人の物書きとしての資質全体を否定するようなフィードバックが送られてくることもありません。

一方、Dr. 会社員の主観ですが、マスコミと比較すると翻訳業界では、上から目線のフィードバックや翻訳者の資質そのものを否定するようなフィードバックを翻訳者に送るチェッカー(会社)が多い気がします。


翻訳を長年やっていると、一人の翻訳者が原文を完璧に理解し、非の打ちどころのない訳文を納品しなくてはならないような気分にさせるチェッカーに遭遇することがあります。

もちろん、翻訳者は誤訳をしたり変な訳文を書いたりしないよう、最善を尽くすべきですが、翻訳者も人間である以上、完璧は無理です。

Dr. 会社員は、理不尽で非生産的なフィードバックをもらうと、チェッカーのコメント内の誤字脱字や二重敬語が妙に気になります

これは結局のところ、翻訳者同士の足の引っ張り合い、負のスパイラルです。


まとめ

まとめ

Dr. 会社員は現在に至るまで、色々な会社と取引してきましたが、長期にわたって取引が続いているのは、上記の要素においてまともな会社です。

今回の投稿では、Dr. 会社員自身の経験を振り返り、長期的に取り引きが続いている会社の要素を説明しました。

  • 支払能力
  • 単価の設定方法
  • フィードバックの質

翻訳者も人間です。

ただあら捜しをするのではなく、問題点は客観的に指摘し、協力して最高の商品を提供しようという姿勢の取引先と仕事をした方が、良い翻訳につながるに決まっています。