翻訳業界の外では「機械翻訳」と「翻訳ソフト(翻訳支援ソフト)」は一緒くたに扱われている場合が多いものの、翻訳業界ではこの二つの概念は明確に区別されています。
シンプルにまとめると、機械翻訳では、機械が考えて翻訳します。一方、翻訳支援ソフトは、人の手による翻訳の効率を上げるソフトウェアを指します。
一般的に、機械翻訳は neural machine translation(ニューラル機械翻訳、MT または NMT)、翻訳支援ソフトは computer-assisted translation (コンピューター支援翻訳、CAT) software と呼ばれています。
今回の投稿ではこの二つの概念を区別して説明します。
目次
機械翻訳
機械翻訳とは、人間の脳と似たような働きができるネットワーク(neural network)モデルを使って行う翻訳を指します。
ニューラルは日本語で「神経」と訳されるので、日本人の多くはこの言葉を聞くと、痛いとか熱いとか、触感を司る神経を想定しがちかもしれません。しかし、人工知能を話題とする場合の「ニューラル」は脳神経を意味します。
「ニューラル」を機械翻訳と同じ文脈で用いる例として、(脳)神経内科が挙げられます。(脳)神経内科では、アルツハイマー病や認知症、言語障害を治療したり研究したりしています。
機械翻訳でよく知られているのは、
などですね。
最近話題になっている「Deep L」は、その中でもダントツに精度が高く、使い方も簡単です。
Dr. 会社員も実際に使ってみました。機械翻訳は面白半分で、どんな笑える翻訳が出てくるのかを見るためくらいにしか使っていなかったのですが、Deep L を使ったときには、笑える翻訳は出てきませんでした。
使い方も簡単で、画面の左側に原文を入力するだけで、右側に訳文が出てきます。
ファイルもアップロードできるようですが、この機能を含め、機械翻訳のサイトを利用する際には著作権に注意する必要がありますね。
コンピューター支援翻訳
コンピューター支援翻訳(CAT)では、機械でなく人間が主に翻訳作業を行います。
CAT ツールは、人間の翻訳者の効率を上げるようにデザインされており、代表的な CAT 機能は、
- 翻訳メモリ
- 用語集
でしょうか。
業界で広く使われている CAT ソフトには、
- Trados Studio
- MemoQ
- WordFast
- Memsource
などがあります。
翻訳メモリは、原文と訳文をセットにして保存された翻訳データです。保存された翻訳メモリの原文に完全に一致またはある程度一致している原文が登場すると、ツールが訳文のヒントを表示してくれます。
表示されたヒントの訳文を基に人間の翻訳者が手直しをすることで、一から翻訳するよりも時間を短縮でき、文書全体の統一感を保てる、という仕組みです。
まとめ
今回の投稿では、翻訳業界の外では一緒くたに使われがちの「機械翻訳」と「コンピューター支援翻訳」の違いを説明しました。
機械翻訳
- 機械が自分で考えて翻訳
- 必要に応じて人間が手直し
コンピューター支援翻訳(CAT)
- 人間が自分で考えて翻訳
- 翻訳メモリや用語集で作業効率を上げる
CATツールの代表、SDL社のトラドスの使用法については、過去の投稿で説明しています。