「英語力」を活かした仕事、というテーマでネットを検索すると、「翻訳」を紹介するサイトがわんさか出てきます。
確かに、英語と日本語のペアの翻訳では、英語が読めるなり書けるなりできないと仕事になりません。
しかし、これだけ日本の全国各地で翻訳者になりたい(ほとんどが副業希望のようですが)という人が大勢いる中で、実際に翻訳でまとまった収入を得ている人の割合は非常に限られています。
この理由は恐らく、日本人が考えている「英語力」と、翻訳に必要な言葉の運用力にギャップがあるからだと思います。
目次
そもそも「英語力」とは何なのか
日本人には、何らかの名詞に「力」を付けて定義がぼやっとした複合名詞を作るのが好きな傾向があります。
日本語は「〇〇パワー」に溢れています。
「英語力」もその一つです。
日本語の「力」は非常に曖昧で、英語の「power」や「strength」の様に意味がはっきりしません。
とにかく「力」の前に置かれた名詞を上手にこなすことが、「〇〇力」が指すぼやっとした意味のようです。
例えば「貯金力」とは「上手に貯金できること」であり、「忘却力」とは「上手に忘れられること」といった感じです。
その一方で「握力」や「背筋力」などは、「strength」を明確に指しています。
「英語力」は前者の「力」で、「上手に英語が使えること」となるのかと思います。
しかし、「上手に英語が使える」というのは、一体どういうことなのでしょう。
「英語力」は検定の点数?
「英語力」は「上手に英語が使えること」であると同時に、英語検定の点数や級とリンクもされています。
「上手に英語が使えること」は検定の点数によって裏付けられる、というロジックになるのでしょうか。
しかし、この考えに対する反論は、各方面で何年も前から挙がっています。
何事も定量化によって状態をイメージしやすくなるので、検定というのは便利なシステムではあります。
ただ、この定量化された「英語力」を、英語を使用する場面全てに当てはめるのには無理があります。
翻訳も、定量化された「英語力」を丸ごと当てはめられない対象の一つです。
翻訳では、マークシートで問題に解答するのではなく、生きた言葉を扱います。
マークシートで高得点が取れても、実際に文章を書かせると誤字脱字がたくさん、という人は割といます。
翻訳で活かすのは「英語力」だけではない
「英語力を活かして翻訳の仕事をしよう」と考えていると、残念な展開になりがちです。
それは恐らく、定量化できる「英語力」の引き上げに膨大な労力・時間・お金をかけている一方で、実際の生活で英語を使っていなかったり、「日本語力」を放置していたりする人が多いからでしょう。
英語から日本語への翻訳では
かなり高度な日本語の運用力が
求められます
本ブログで繰り返し述べているように、以下のような和訳はしょっちゅう目にします。
- 訳者が原文を大体理解しているのは分かる
- 訳文の日本語が変
- 英語が直訳されておりメッセージが伝わらない
まとめ
今回の投稿では、英語力を活かして翻訳する前に考えてみると良いかもしれない点について書きました。
「英語力」というのは、本当にぼやっとした言葉です。
検定の点数をもって「英語力」と言える一方で、検定の点数が高くなくてもネイティブに伝わる表現を使いこなせることも「英語力」と言えます。
あまりにぼやっとした概念なので、「英語力」があるから「翻訳」もできる、とは言い切れません。