高圧的なチェッカーが多い英日翻訳

高圧的なチェッカーが多い英日翻訳

基本的に、翻訳の工程にはチェック作業がもれなく付いてきます。

翻訳の品質を確保するための大切なステップであり、Dr. 会社員もその重要性はよく認識しています。

ただ、英語から日本語への翻訳では、品質管理という目的から逸脱した作業を行うチェッカーが多い気がします。

しかも、この言語方向のチェッカーには何故か、翻訳者の意見に一切耳を貸さない高圧的な人が多い。

何というか、チェッカー個人の自尊心を満たすことがチェック作業の究極の目的となっている、と感じる場面が多いのです。


匿名になると高圧的

匿名になると高圧的

Dr. 会社員は、主に日本語から英語への翻訳で生計を立てています。

正確にカウントしてはいませんが、去年までの2年程はロックダウンで外に出られない時期に仕事ばかりしていたので、一日平均2,000~2,500字、一年で60~70万字程の日本語を英訳したかと思います(もう少し多いかもしれません)。

英語から日本語の仕事も余力がある時や気が向いた時は受注しているので、仕事全体の20%弱が英語から日本語への和訳です。

しかし、Dr. 会社員が今までに受け取った意味不明で高圧的なフィードバックは、約99%が英語から日本語への翻訳に関するものです。

何が「意味不明」かというと、チェッカーによる書き換えの根拠が不明、つまり、書き換えによって文章が改善されていない、ということです。

例としては、「日本とアメリカの降水量」が「日本およびアメリカの降水量*」に書き換えられた場合などが挙げられます。

この書き換えによる結果は「字数が増えた」ということ以外に何もありません。

Dr. 会社員は、「and」を無条件に「および」と訳した和訳は不自然な日本語だと感じています。

* 別の投稿でも触れましたが、英日翻訳業界には、「and」は「および」と訳さねばならないという業界ルールがあるのでしょうか?「および」まみれの和訳を非常によく目にします。

上記以外では、文書内に数回登場した「urgent」がすべて「緊急」と統一されていない場合は不可、とするチェッカーに遭遇したこともあります。

もちろん、キーワードの訳は統一すべきですが、文中の単語一つひとつの訳語を一対一で統一すると味気ない(もしくは奇妙な)日本語になります

「Urgent」は文脈によって、「緊急の」だったり、「切迫した」だったり、「早急に」だったりするわけです。

翻訳業界では”訳語の統一(consistency)”という言葉がよく使用されますが、あまりしつこく強調されると、少々気味悪く感じます。

チェック作業の目的を果たす気がないチェッカーに運悪く遭遇すると、「チェッカーが書き換えた」という事実のみに基づいて、翻訳会社(プロジェクトマネージャー)からイチャモンまで付けられることがあります。

非生産的なチェック工程の根底にあるのは、「相手の立場が自分より高いという証拠がない」環境に置かれると、とたんに威張り散らす日本人が多いことにある、とDr. 会社員は感じています。

相手の立場が自分より高いという証拠がない」ならば「相手の立場は自分より低い」という命題は、必ずしも「真」ではありません。

しかし、「相手の立場が自分より高いという証拠がない」=「相手は下等生物」と判断し、ヒエラルキーの最下層に位置付けたがる人が一定数いる様です。

そもそも、相手の肩書や立場で態度を変えることは、チェッカーの資質以前に人格上の問題だとDr. 会社員は思っています。


自己満足に過ぎないチェック作業

自己満足に過ぎないチェック作業

翻訳チェック作業の本来の目的は「品質管理」です。

しかし、翻訳業界には(特に英語から日本語)、自らの自尊心を満たすためにチェック作業を利用しているチェッカーが一定数存在します

この人達は、ひょっとしたら無意識でこのような行為に及んでいるのかもしれません。

もちろん、ほとんどのチェッカーは品質管理を念頭に置いたチェックをしてくれます。

しかし、他人の文章を自分流に書き換えることで謎の優越感に浸っているチェッカーがいることも、事実です。

この人達は、著作権(copyright)という概念が民主的な国家に根付いていることを理解していないのかもしれません。

(法律が適用されるかどうかはともかく、この様な概念が一般常識として共有されていることを理解していない、という意味です。)

熟練の翻訳者の多くは、チェッカーによる書き換えの根拠が品質管理か自己満足かをすぐに見抜けます。

訳文がどう書き直されているかを見れば、
書き直した人の意図は
すぐ分かります。

本当に優秀なチェッカーや校正者は、翻訳者やライターの文章スタイルを尊重しつつ、純粋なエラーを適切に直してくれます。

Dr. 会社員は、こういう優秀なチェッカーにもお世話になったことがあります。

また、マスコミに勤務していた頃、非常に優秀な校正者にお世話にもなりました。

そのため、自尊心を満たすためのチェックと本物のチェックの違いは、すぐに分かります。


まとめ

まとめ

今回の投稿では、「高圧的なチェッカーが多い英日翻訳」をテーマに、Dr. 会社員が感じていることを綴りました。

高圧的なチェッカーによる理不尽な書き換えという冤罪を根拠に翻訳者としての評価が下げられるのは、不愉快極まりない事態です。

では、高圧的なチェッカーを避けるにはどうすればよいのか?

高圧的なチェッカーに遭遇するのは事故の様なものなので、未然に防ぐことはできません。

ただ、一度不愉快な思いをして、問題のチェッカーが潜んでいると分かった工程を経るプロジェクトは二度と引き受けないことで、同じ轍を踏む事態は避けられます。

また、この手の事故に遭遇する確率は、日→英よりも英→日で圧倒的に高いので、英語に磨きをかけて日英翻訳を目指すのも一案かもしれません。