フリーランスの翻訳家として仕事を探すにあたり、気を付けるべきポイントがいくつかあります。
まず基本的に、複数の取引先と契約を結んでおくことをお勧めします。
翻訳会社に翻訳者として登録しても、仕事が入ってくるとは限りません。
他にも注意すべき点があるので、今回の投稿でいくつか説明します。
目次
特定の一社から全体の50 % 以上を受注しない
駆け出しのうちは、自分に合うビジネスパートナー像が描けません。翻訳家にとっての「働きやすさ」を決定する要素は、案件の内容だけでなく、プロジェクトマネージャーとのコミュニケーション方法や翻訳料の支払いサイクル、納品後の訂正依頼の規模や頻度など、多岐にわたります。
自分に合っている取引先を見極める意味でも、翻訳の仕事を始めたばかりの段階で特定の一社から集中して仕事を受けるのは避けた方が賢明でしょう。
目安としては、 2~3 ヵ月で受注する案件の50 % 超が一社からにならないよう上手く分散するといいと思います。
気の合う一社から約50%、残りを今後の長期的な取引先候補で分散するといった感じです。
また、翻訳の案件はソースクライアントからの依頼があって初めて発生するものなので、特定の一社とばかり取引していると、その会社の受注が減った時に自分にしわ寄せが来ます。
今年の新型コロナウイルス騒動や2007~2008年の世界金融危機のように予期しない事態が発生した場合、複合的な要因で突然受注が激減する会社もあります。
通訳・翻訳の業界ニュースを発信しているSlatorというメディアが、今回の新型コロナウイルス騒動で業界が受けているダメージを分析しています。
取引先の料金体系を調べる
取引先候補にアプローチする前に、その取引先がソースクライアントにいくらチャージしているのかを調べることで、実際にその会社と取引する際にどのくらいの翻訳料を受け取るのが妥当なのか見当が付けられます。
さらに、ソースクライアントに対する翻訳料金が高い会社というのは、品質管理や業務の効率化に投資している可能性がある一方、翻訳者に利益還元せず会社がマージンをかなりとっている可能性もあります。
前者であれば、仕事のしやすいビジネスパートナーとなるポテンシャルがあると言えます。
後者の場合は、トラブルや翻訳者側の不満に後々発展する可能性があります。
一方、格安翻訳をウリにしている会社と取引すると、自分の取り分も確実に低くなります。
基本的に、ソースクライアントにチャージしている料金の半分以上が翻訳者に支払われることはまずありません。
翻訳会社は翻訳者以外のスタッフに給与を支払わねばなりませんし、オフィスの維持や電気代、通信費など経常支出がありますからね。
契約する前には取引先候補のリサーチを念入りに。こちらの投稿もぜひ参考にしてください。
自分の最低単価を設定する(安売りしない)
翻訳者として自分を安売りしないようにしましょう。
激安価格で仕事をするくらいなら、自治体やNPOなどからボランティアの翻訳案件を引き受けた方が満足感を得られます。
余りに低い単価で仕事を受けてしまうと、過去の投稿でも触れましたが、コストパフォーマンスが非常に低くなります。
自分はまだまだ実力不足だから・・・と思うのであれば、激安の案件を受けるより勉強に時間を費やした方が効率的です。この理由についても別の投稿で説明しました。
知らない分野の案件を安易に引き受けない
取引先との信頼関係に関わります。
専門性の高い案件ほど、訳出する用語に気を付ける必要があります。想定される読者も専門家である場合が多いので、おかしな訳文にはかなり厳しいクレームが付きます。
専門知識のない翻訳者による訳文は、納品後の手直しに時間と労力がかかり、翻訳会社にとって大きなロスとなります。
Dr. 会社員は以前、専門知識のない翻訳者が訳した文章の手直しを引き受けたことがあります(和文英訳)。用語の訳出に問題がある上、その文書で論じられているある内容の定義が完全に誤って訳出されていました。確かに原文の日本語が分かりにくい文章ではあったのですが、その問題の事象について知識があれば確実に避けられた誤訳です。
仕事が思うように入ってこないときは、何にでも飛びつきたい衝動に駆られますが、長期的な視点を持ってキャリアアップを図りましょう。