ポストエディットの単価は四捨五入で0円

ポストエディットの単価は四捨五入で0円

ここ数年、翻訳業界では機械翻訳の導入が飛躍的に進み、翻訳者に打診される案件でポストエディット(Post-editing/postediting, PE)と呼ばれるジャンルが占める割合が大きくなっています。

翻訳業界や学会が色々な定義や分析を示していますが、翻訳者にむけてシンプルに説明すると、

ポストエディット
=
機械翻訳のチェッカー(校正)

ということです。

翻訳会社や翻訳研究者はこぞって反論するかもしれませんが、現場の翻訳者にとっては上記以上の意味はありません。

ポストエディット案件では、単価が極限まで下げられています。

英語から日本語への翻訳は一般的に、

四捨五入で
0円です

Dr. 会社員は以前、日本語から英語で、

0.01USD/原文1字

の案件を一斉メールで打診されたことがあります。


ポストエディットはライト~フルコース

ポストエディットはライト~フルコース

ポストエディットには色々なコースがあります。

機械による一次翻訳に人間の翻訳者がどれだけ手を加えるかに応じて、ライトコース(light post-editing)からフルコース(full post-editing)まであります。

* 上記の表現はDr. 会社員が勝手に使っているだけです。翻訳会社とやり取りする際は、「ライトエディティング」とか「フルエディティング」と言ってください。

想像に難くないことですが、翻訳者が受け取る翻訳料はフルコース>ライトコースとなります。

英語から日本語への翻訳では、フルコースであれば四捨五入で0円となる額の上の方ライトコースであれば四捨五入で0円となる額の下の方が単価となります。

日本語から英語への翻訳でも、為替レートで調整すれば、ほぼ同じ価格水準です。


ポストエディットは翻訳者に不評

ポストエディットは翻訳者に不評

ポストエディットは翻訳者には不評です。

少なくともDr. 会社員の周囲には、「最近ポストエディットに目覚めた」とか「この頃はポストエディットに夢中」という翻訳者はいません。

どちらかというと、

最近、
機械で下訳したのを
修正するだけの仕事を
打診されるんだよね。
自分は断ってるけど

という人がほとんどです。

そもそも、ポストエディットの主な目的は翻訳会社のコスト削減なので、翻訳者にとってメリットは少ないのです。

むしろ、経験を積んだ翻訳者程、機械による翻訳が作業の妨げになり苛立ちを覚えるという展開になっています。

経験を積んでいる翻訳者は、「原文を読む」作業と「訳文を考える」作業を脳内で同時進行しています。

頭に浮かんだ訳文を、微調整しながら書き出しているのです。

大抵の翻訳者は、機械が提示する訳を見ることで思考が妨げられます

また、機械による翻訳が間違っていることもあるので、機械翻訳との辻褄を併せつつ、機械の誤訳も修正しなくてはなりません。

一言で表現すると、

めんどくさい

のです。

一部の翻訳会社はポストエディットが時間短縮に有効と謳っていますが、Dr. 会社員は、よほど単純な文書を除き、現時点では同意しません。


ポストエディットの単価は更に低く

ポストエディットの単価は更に低く

ポストエディットの案件を引き受ける翻訳者は、ポストエディット以外の案件が回ってこない翻訳者がほとんど、というのが現状かと思います。

ポストエディット以外の案件が回ってこない翻訳者は、仕事を得るために必死なので、言い方は悪いのですが翻訳会社に足元を見られがちです。

翻訳者が一斉にポストエディットの低すぎる単価を拒否しない限り、翻訳者が受け取る料金は今後更に下がると思います。

とはいえ、翻訳者が一斉に拒否ということはあり得ないので、ポストエディットの単価は今後も下がるのでしょう。

既に限りなく0円に近い状態なので、ここからどこまで下がるのかが見どころです。


ポストエディットは求人が多い

ポストエディットは求人が多い

ポストエディットの翻訳者を大募集する求人を度々見かけます。

これは恐らく、クラウドソーシング等の激安翻訳と同様、翻訳者が定着しないためでしょう。

ポストエディットやクラウドソーシングといった借用語は日本人にはトレンディ―に聞こえます。

また、機械翻訳等、最新技術を取り入れたイメージを伝えるマーケティングが、翻訳者に向けても顧客に向けてもしやすいのでしょう。

しかし、トレンディな響きとは裏腹に、実際の仕事内容と報酬は、翻訳者が憧れるようなものではありません。


まとめ

まとめ

今回の投稿では、ポストエディットの単価は四捨五入で0円ということと、翻訳者側から見たポストエディット案件について語りました。

ポストエディットのマーケティングに力を入れている翻訳会社は増えています。

ポストエディットの案件を打診された場合は、マーケティングの文面やビジュアルに影響されず、しっかり両目を開き内容を吟味した上で受注することをお勧めします。

現在翻訳家を「目指している」という段階の人は、自分は激安ポストエディット求人の絶好のターゲットである、ということを自覚しておくとよいでしょう。