機械翻訳には、複雑な問題が内在している

機械翻訳には、複雑な問題が内在している

機械(人工知能)を活用したニューラルネットワークによる翻訳は、近年目覚ましい発展を遂げています。

ドイツ発の「Deep L」やフランス発の「SYSTRAN」を始め、非常に難易度の高い英語⇔日本語の翻訳もかなり自然にできるようになりました。

そのため、翻訳業界では機械翻訳を使って翻訳のコストを抑える動きが広がっています。


コスト削減を狙う翻訳会社

コスト削減を狙う翻訳会社

機械翻訳の精度が高まってきたことから、機械翻訳を導入する資金力のある大手翻訳会社が続々と、コスト削減に取り組んでいます。

機械翻訳を導入することによって削減できるコスト、というのうはつまりこれです。

人間の翻訳者に支払う翻訳料

機械による一次翻訳を人間の翻訳者が手直しする、ポストエディットと呼ばれる形態が、大手翻訳会社の間で広く取り入れられるようになりました。

ポストエディット案件のレートは概して激安です。

専門分野の翻訳でも、平易な文書に比べればマシですが、料金がやや下がります。

翻訳会社の言い分としては恐らく、ポストエディットでは翻訳者が実際に手を動かす時間が少ないため、レートも低くなる、ということなのでしょう。


機械翻訳の問題は、機械そのものではない

機械翻訳の問題は、機械そのものではない

現在、機械翻訳を活用したポストエディットなどの案件には品質・効率において問題があると言えます。

これらの問題は、機械翻訳の精度ではなく、人間の翻訳者の使い方に起因するように思えます。

どういうことかというと、現在の業界の仕組みでは、機械翻訳が絡む案件で腕のいい翻訳者が確保できないということです。

なぜなら、腕のいい翻訳者は、ポストエディットなどの激安案件は受けないからです。

そのため、ポストエディットを引き受ける翻訳者のほとんどは、ポストエディット以外の案件で受注できない翻訳者、という図式が出来上がります。

スキルが不十分な翻訳者は大抵、以下に挙げる問題を抱えています。

  • 機械翻訳の不自然な日本語に引っ張られる
  • 機械による翻訳を最初に目にすることで、誤訳を見落とす

よって、ポストエディット案件では、手掛ける翻訳者を慎重に選ばないと、最終的な納品物がおかしな日本語のまま、誤訳を含んでいる可能性が高くなります。

こうなると、後日クライアントからクレームが上がり、別の翻訳者にレビュー・修正を依頼することになります。

Dr. 会社員は実際、この様な手直しの案件を打診されたことがあります。

ただ、これらの手直しはレートが非常に低く、最初から翻訳するよりも時間がかかるので、Dr. 会社員は、ほとんど引き受けません。

他の翻訳者も同じと察します。

よって、こういった手直し案件を引き受ける翻訳者のスキルも微妙な場合が多い、と思われます。

この様に、最初から人間が翻訳した方がコストを抑えられたのでは、と感じさせられる事態を度々目にします。


まとめ

まとめ

今回の投稿では、現在の翻訳業界における機械翻訳の活用法に内在する問題を、以下の点に触れつつ説明しました。

  • 翻訳会社によるコスト削減
  • 機械翻訳の問題は、機械そのものではない

翻訳チェッカーを活用する際にも同じことが言えるのですが、翻訳者が実際に手を動かす時間が少ないという理由でレートを下げすぎると、最初から妥当なレートで腕の良い翻訳者に依頼した方が時間もコストも抑えられた、という結果になりかねません。