翻訳業界は衰退なんかしていない

翻訳業界は衰退なんかしていない

翻訳業界は衰退するのか?

というクエスチョンがネット界で飛び交っている様です。

学校で習った『平家物語』に書いてあるように、この世では何でも盛者必衰なので、翻訳業界も「いつかは」廃れるのでしょう。

とはいえ、今後50年くらいは大丈夫だとDr. 会社員は思っています。

10年以上この業界に関わってきていますが、廃れている感じは全くしません。

むしろ、成長している気がします。


業界の成長と翻訳者の収入の関係

業界の成長と翻訳者の収入の関係

翻訳業界が成長していると言っても、業界の成長個人の翻訳家が受け取る対価は別次元の話です。

Dr. 会社員が思うに、「翻訳業界は衰退するのか?」と問いかけている人たちは、業界の状況ではなく、個人の翻訳者が受け取る対価が気になっているのでしょう。

Dr. 会社員は、以下の様な傾向を感じています。

業界そのものは
成長している一方、
低収入の翻訳者が
増えている。

翻訳業界が人工知能(AI)をレバレッジに成長しているので、こういう傾向になるのでしょう。


機械翻訳の発達

機械翻訳の発達

翻訳業界が取り入れている機械翻訳(翻訳メモリではありません)は、ものすごいスピードで成長しています。

企業が独自に開発しているニューラル機械翻訳は、ネットの無料翻訳とは比べ物にならないくらい高精度です。

そのような翻訳マシンもまだまだ完璧とは言えず特に日本語と英語のペアではかなり奇妙な訳が次々と出てきます

それでもAIの発達が低収入の翻訳者の増加を助長したことは間違いないでしょう。

機械翻訳後のポストエディットは、かなり低い料金で翻訳者が募集されています。

一方で、翻訳マシンを保有している翻訳会社は、今まで以上に素早く大量の翻訳をこなせる上、人間の翻訳者に支払う対価が減るので、利益が上がるということになります。

これは、良い悪いの話ではなく、シンプルな事実です。

専門知識が求められない平易な文章の翻訳は、機械でかなりどうにかなる時代となりました。

そのため、外国語が得意というだけで専門知識を持たない翻訳者は、機械のサポート役として安価に活用されています

この傾向は翻訳業界だけでなく、どこでも起きている現象です。

どんなビジネスも、人件費は最も減らしたいコストなのです。

ドキュメンタリー映画の「The True Cost」が、この辺の流れの代表例でしょうか。

‘The True Cost’ – Official Trailer

翻訳で稼ぎたいなら専門知識を身に着ける

翻訳で稼ぎたいなら専門知識を身に着ける

「月に2~3万円稼げれば御の字」程度を目指しているのであれば、翻訳マシンのアシスタントとして作業するポストエディットがちょうど良いのかもしれません。

上述したように翻訳業界は全く衰退する様子はなく、むしろニューラル翻訳が発達したおかげで、ウェブサイトの翻訳等、平易な文章の依頼は激増しています。

日本の人口は現在でも1億を超えており、その多くが外国語を読み書きできません

その一方で、日本国民の識字率はほぼ100%と、世界で稀に見るほどのレベルなので、翻訳業界にとって日本は重要な市場です。

また、平易な文書だけでなく、専門的な文書の翻訳も活況です。

専門分野の翻訳の場合、機械で生産した訳の完成度があまり高くありません。

文脈を無視した訳語が使われていて、その分野の専門家が読んだら吹き出してしまうような訳文になっていることがよくあります。

そのため、機械翻訳後のポストエディットでも翻訳料が激安になることは滅多にありません。*

*もちろん、一から訳すよりは安くはなります。

翻訳で稼ぎたいなら、専門知識を身に着けた方が絶対に有利です。

専門知識は何らかの講座を受講して学ぶのも一案ですが、独学でも十分です。

Dr. 会社員は自分の専門分野での職務経験があり、博士号も持っていますが、今でも読書を通して独学を続けています。


まとめ

まとめ

今回の投稿では、翻訳業界は衰退なんかしていない、とDr. 会社員が感じている理由を説明しました。

翻訳業界はむしろ成長しています。

需要が伸びているので。

情報媒体の主流がネットになり、内容を頻繁に更新することが求められるようになりました。

そのため、官民共に次から次へと文章を翻訳する必要があるのです。

この流れで、機械が主流の激安翻訳が急拡大しました。

搾取される翻訳者が増えたことと翻訳業界の衰退が混同されているようですが、現実は違います。

安価な労働力としての翻訳者が増えている一方で、翻訳業界は成長している、というのが現実です。