日本語と英語の言語ペアでの翻訳は、本当に難しい作業です。
そのため、高いスキルを持つ翻訳者は、どちらの方向でも生活に十分な収入を得られます。
まともな翻訳ができる人が、英日・日英どちらの方向でも限られているので、一定以上のスキルを持つ翻訳者の間では、巷で騒がれているほど競争は激しくありません。
スキルの高い翻訳者には、まとまった収入に繋がる仕事は十分にあります。
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英日翻訳では食べていけない?
ここ20年程、英語から日本語への翻訳は値崩れが進んでいて、翻訳業では食べていけない、という意見が各方面で出ています。
これは半分当たっています。
実際は、英語から日本語への翻訳は二極化が進んでいて、激安系の英日翻訳では食べていけない、という状況かと思います。
激安系の翻訳では、フルタイムで一か月作業しても売上が20万円に満たないかもしれません。
一か月毎日仕事が入ってくる可能性は低いので、20万円というのは理論上の最高値です。
ここから税金や各種保険料を払うので、懐状況はかなり厳しくなると思います。
「難しくない翻訳」というジャンル
激安系の翻訳は、「難しくない英日翻訳」という新しいジャンルなのかもしれません。
本ブログで何度か触れましたが、激安系の翻訳サービスは年々拡大しています。
「安く」「早く」を極限まで追求する消費者が増えている上、機械翻訳の技術が日々向上しているので、人間が機械にサポートを提供する形で成り立つ翻訳プロジェクトが増えています。
ポストエディットと呼ばれる形式の案件が、上記にあたります。
機械を使ったポストエディットでなく、人の手だけによる案件ですら、「早い」「安い」を重視する消費者もいます。
そのため、とにかく今すぐ取り掛かれる人であれば誰でもOK、という激安の英日翻訳の案件に、英語が得意な日本人が次々と駆り出されている、という印象をDr. 会社員は受けています。
十分なスキルを持つ翻訳者がなかなか見つからず、苦労している翻訳会社がある一方で、いつでも対応可能な「英語が得意」レベルの翻訳家希望者を激安価格で年中募集している会社もあります。
本物の翻訳スキルの習得は、長期戦
本当に使える翻訳スキルを身に着けるには、かなりの年月を要します。
「学校で語学の成績が良かった」程度では、まともな翻訳はできません。
翻訳者にまともな翻訳料を支払う会社と取引できないのであれば、その理由は、語学力が足りないのではなく、翻訳力が足りないからでしょう(取引先を選ぶビジネススキルも)。
語学力の中心は、文法解析や語彙の暗記です。
一方、翻訳力の中心は、文章の読解力や記述力・表現力です。
別の投稿でも説明した様に、翻訳の世界では、ある程度年齢を重ねている人、特に仕事を通して母語を正確に読み書きした経験が多い人の方が、若い人より有利と言えます。
母語で高度な運用力を持っていない人は、外国語を使いこなすことができません。
まとめ
今回の投稿では、日本語と英語ペアの翻訳は正直難しい、とDr. 会社員が考える理由を説明しました。
また、「難しくない翻訳」という新たなジャンルが拡大していることにも触れました。
この「難しくない翻訳」の市場が拡大しているため、まともな翻訳スキルを身に着ける前にこのジャンルに参入し、成長の機会を逃している翻訳家希望者は、数多くいると思います。