日本人の間では一般的に、通訳は翻訳より難しいと考えられる傾向があります。
しかし、これは偏見です。
日本人の通訳・翻訳業界では妙なヒエラルキーを感じることが度々あります。
通訳は翻訳者より格上、と考えている人がいる様ですが、Dr. 会社員の自分の経験に基づくと、実際は違う気がします。
特に所得面では、まともに本業として取り組んでいる人に限定して言えば、翻訳者の方が通訳者よりも恵まれている人が多い気がします。
もちろん、収入や所得の高低には、個人の向き不向きや環境が大きく影響しますので、一概に翻訳の方が儲かるとも言い切れません。
目次
日本語が母語だと外国語が聞こえない
日本人が通訳の方が翻訳より難しいと感じる主な理由は、日本語が母国語だと英語を始め外国語の音が聞こえないからです。
これは脳の構造上の問題なので、どうしようもありません。
一部の言語学者らが仮説を立てている様に、第二言語の習得には年齢的な限界があります。
これは特に、「音の聞き取り」に大きく影響している気がします。
そのため、英語と日本語のペアでは、幼少期を英語圏で過ごした日本人や、両親のどちらかが英語ネイティブというハーフが、翻訳より通訳に多い気がします。
Dr. 会社員は以前、日本語が上手く書けないので、通訳はできても翻訳ができないという、(見た目は)日本人に会ったことがあります。
この方、両親は日本人ですが、小学生の頃から英語圏で暮らしているとのことでした。
初等教育、中等教育、高等教育全てを英語で受けており、友人も英語ネイティブばかりなので、この人の第一言語は英語なのでしょう。
英語が第一言語の場合、日本語を聞き取ることは逆方向に比べると遥かに簡単です。
通訳では、翻訳ほどの繊細さは期待されない
通訳では訳出に時間的な制約があるため、一番大事なポイントを外していなければ、完璧な訳でなくてもOKな場合がほとんどです。
例えば、英語で「police car」と聞いて「パトカー」や「警察車両」という言葉がとっさに出てこない場合は、「警察の車」でも通訳の場合は大丈夫、ということです。
一方、上記の訳は翻訳ではアウトです。
通訳の現場では、翻訳の様に言葉の選択に悩んでいられる時間がないので、素早さが勝負です。
もちろん、
早いだけで完全に間違っていては
ダメです
翻訳で100%が求められる訳が、通訳では70%くらいで大丈夫、という感覚でしょうか。
翻訳と比較すると、通訳では数字を間違える人を目にすることが多い気がします。
日⇔英の数字の変換は神業なので、仕方ないとも言えますが。
翻訳ではスピードがある程度犠牲になり、通訳では精度がある程度犠牲になります。
Dr. 会社員の知人の中には、通訳と翻訳両方やっている人もいますが、皆さん大抵どちらかが明らかに得意です。
Dr. 会社員の主観ですが、通訳が得意な人の翻訳は、全体的に大雑把な感じがします。
まとめ
今回の投稿では、通訳は別に翻訳より難しいというわけではない、という内容を、以下の点から説明しました。
- 日本語が母語だと外国語が聞こえない
- 通訳では、翻訳ほどの繊細さは期待されない
上記で説明した内容を踏まえると、日本人で通訳に向いている人は翻訳に向いている人に比べて絶対数が少ないことが分かります。
よって、日本人の通訳者には希少価値が生まれます。
そのため、冒頭で触れたヒエラルキーが発生するのかもしれません。
現実には、レベルの高い翻訳ができる翻訳者も希少価値が高いはずなのですが、「(質を問わず)翻訳ができる」という人は有象無象にいるため、「翻訳」と「通訳」という大きな分類では、通訳が格上に見られるのでしょう。