翻訳家として
生計を立てたいなら、
稼がなくてはなりません。
シンプルな事実です。
では翻訳で稼ぐためにはどうするか。
長期的に稼ぐには、翻訳者として自分の価値を上げていくしかないので、小手先のテクニックを駆使しても意味がありません。
トライアル対策など巷には色々と出回っているかもしれませんが、大学入試の様に限られた対象にターゲットを絞ってトライアル対策をしても、達成できるゴールは「XX社のトライアル合格」であって、「稼げる翻訳家」ではありません。
目次
翻訳者としての価値を上げるには
翻訳者としての価値を上げるには、以下に挙げる項目を改善する必要があります
- 原文の読解力
- 翻訳先の言語での語彙と表現力
- 翻訳の分野の専門知識
- スケジュール管理能力
- ITスキル
- 仕事道具
翻訳家を目指す人の多くが、上記のリストに入っていない「英語力(語学力)」を伸ばすことに全力投球しています。
しかし、これまで本ブログで何度も述べているように、英語力と翻訳スキルには一部共通点があるものの、この二つはかなり異なる能力です。
翻訳家を目指す人に上記の様な傾向があるのは仕方ないとも言えます。何故なら、「英語力(語学力)」を測るテストは頻繁に開催されており広く認知されているため受験しやすい一方で、翻訳家としての資質を測るはっきりとした指標はないからです。
翻訳スキルを測る検定は一応ありますが、実際の翻訳の現場では無限と言えるほど多岐にわたるトピックや文体が扱われており、検定で出題される内容では、多様なトピックや文体全てをカバーすることは不可能です。
よって、翻訳の検定で高得点を取った人が翻訳のあらゆる分野で活躍できる、と結論付けることはできません。
一部の翻訳会社は、登録希望者に資格の有無や検定の点数を聞いています。しかしそれは、選考作業の効率化を図るためのスクリーニング用の質問と思われます。あまりに点数が低ければ足切りとなり、大同小異の応募者が殺到した場合に有資格者やテストで高得点を取っている人から受け入れる、といった程度の位置付けでしょう。
翻訳の検定は日本に限らず海外にもありますが、どこの国のものでもほとんどが、原文の読解力と訳出先の言語での文法や表現力を評価する程度に留まっているとDr. 会社員は考えています。
翻訳家としての能力は上記に挙げた項目をはじめ複合的な要因で決まるものであって、受験勉強や資格試験のように特定の知識やメソッドにフォーカスするシンプルなアプローチのみで高めることはできません。
つまり、翻訳家としてデビューするために翻訳学校に通ったり教材を購入したりすることは、能力の一部を開発したり、特定の翻訳会社とのコネクションを築く上で有効かもしれませんが、翻訳家としての能力全体を引き上げるには不十分ということです。
因みに、Dr. 会社員は翻訳学校に通ったり教材を購入したりするな、と言っているのではありません。上記で伝えたいのは、お金も時間もかなり投資することになる上記のような行為が翻訳家としてのリターンに直結すると期待している場合、そのような期待はほぼ間違いなく裏切られる、ということです。
一方、翻訳家志望者が見落としがちなのが上記のリストで一番下に挙げた「仕事道具」です。
まだ仕事がないから
必要ない
仕事が入るようになってから
考えよう
という発想のままだと、いつまでたっても現状のままです。
仕事道具がお粗末であるが故に、機会を逃す可能性があります。
せめて、翻訳の案件獲得と同時進行で仕事道具をアップグレードしていくことをお勧めします。良い道具を持つことで、翻訳家としてのプロ意識が向上するという心理的な効果も期待できます。
フリーランスは自己投資に有利
仕事道具のアップグレードという意味では、フリーランスは非常に有利な立場にいます。
何故なら、フリーランスが仕事道具を購入する支出は経費として申告できるからです。
サラリーマンが面接用にスーツを買っても経費の申告はできません。サラリーマンは、所得税を引かれたお金から、さらに消費税を払ってスーツを購入することになります。
経費についての基本的な情報は国税庁のウェブサイトで調べることができます。
Dr. 会社員は日本で確定申告をしたことがないので、日本の税法はよく分かりませんが、フリーランスが事業運営に必要な支出を経費として申告できることは先進国ではほぼ世界共通ということは知っています。よって、今回の投稿ではDr. 会社員の居住国と日本の両方に当てはまるフリーランスのメリットを説明しています。
パフォーマンスと仕事道具の関係
仕事道具のアップグレードについて、ミュージシャンの例を考えてみましょう。
音楽の演奏は、楽器のグレードにかなり左右されます。
もちろん、下手な人が弾けば良い楽器も悪い楽器も同じように下手に聞こえますが、熟練した演奏家が良い楽器と悪い楽器の両方を演奏した場合、違いは明らかです。
翻訳にも似たような理屈が当てはまります。
いくら翻訳家として高い資質を備えた人でも、遅いパソコンや小さなスクリーン、性能の低いフリーソフト、座りにくい椅子や騒がしい環境など、悪条件がそろっていると能力をフルに発揮できません。
翻訳家として生計を立てていくには、教養程度の会計の基礎知識を身に着け、自己投資にかかる費用を合法的に抑えられる範囲を知っておく必要があります。このトピックは過去の投稿でも触れました。
僅かな知識が大きな違いにつながることはよくあります。仕事道具への投資は一考に値するポイントだと思います。