和訳では、読み手に伝わる日本語を心掛ける

和訳では、読み手に伝わる日本語を心掛ける

翻訳では、読者に内容が伝わりやすい訳文を書くことが非常に重要です。

つまり、英語を日本語に訳す場合は、読み手に伝わりやすい日本語を書く必要がある、ということです。

Dr. 会社員が以前チェックした和訳の中に、関係者や現地の人以外は誰も知らないだろうと思われる団体の名前が出てきました。

この名前が、一般的な普通名詞と同様に、訳文中に何気なく登場していました。

これは、和訳では余りよろしくないアプローチです。

何故か?

それは、読者のほとんどが知らない名前だからです。


読み手を想定して日本語を書く

分かりにくい日本語を避ける

和訳に取り組む際には、読者が理解できる日本語を書くことを心掛けなくてはなりません。

現地の住民や関係者の間ではよく知られている名前でも、翻訳された場合、訳文を読む人のほとんどが知らない名前、というのはよくあることです。

団体名が「AAAフーズ」や「BBB航空」など、活動内容が一目で分かるような団体であれば、名称の前に簡単な説明を入れたり鉤括弧(「」)を付けたりしなくても大丈夫でしょう。

しかし、「フーズ」や「航空」といった言葉がない名称の場合は、名前の後に「社」と加えたり、短い修飾句を加えたりするといった工夫が必要です。

例えば、「ABC」という名前の化学メーカーが原文に登場して、この会社が日本人に馴染みの薄い存在であれば、原文通りに「ABCが…」と訳すのではなく、以下の様に表記できます。

化学メーカーのABC社が…
または
化学メーカー「ABC」が…

小さな工夫で、和訳の読みやすさが飛躍的に向上します。

もちろん、原文を逸脱した場合は、コメントを入れてその旨をクライアントに申し送りします。

Dr. 会社員は、こういう対応を「誤訳だ!」と批判する翻訳会社やチェッカーとは取引しません。


生き物以外が主語の文に気を付ける

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無生物主語」を和訳する場合は、原文の構成に依存しないよう注意が必要です。

翻訳チェックの仕事で過去目にした例を紹介します。

英語で書かれた自治体の刊行物が、以下の様に和訳されていました。

AAA市は、
YYYを誇りに思っています

非常に不自然な日本語です。

日本語では、自治体は何かを「思う」動作主にはなりません。

原文は以下の様に書かれていました。

AAA is proud of YYY

州や市が「実施していく」ならOKですが、「思う」はやや無理があります。

こういう訳を見ると、翻訳者が原文は理解できているということは分かります。

英語の読解力テストだったら「正解」でしょう。

しかし、翻訳の目的は、翻訳者が原文を読めていることをアピールすることではありません。

読者が読んで分かる訳文を提供するのが、翻訳者の仕事です。


まとめ

まとめ

今回の投稿では、和訳では読み手に伝わる日本語を心掛けるのが大切だ、ということを説明しました。

他の投稿でも触れた通り、英日翻訳の仕事がなかなか見つからない人には、以下の共通点があります。

  • 読みにくい日本語
  • 変な日本語

Dr. 会社員が今までチェックした和訳の中には、ちょっと違和感があるかな、というレベルをはるかに超える日本語が結構ありました。

変な日本語を書かないようにするためのコツは別の投稿でも紹介していますが、比較的すぐに実践できる書き方の習慣として、以下が挙げられます。

一文を短くする

句読点「、」を活用して一文を延々と長くすると、動作の主体と客体が分かりにくくなります。

英語の原文で、関係代名詞を用いて非常に長い一文が登場する場合があります。

この場合は、長い一文を和訳で無理に再現するのではなく、句点を使って文を分けると読みやすくなることがあります。

ただし、常に用いるべき方法というわけではありません。