翻訳家になりたいなら、迷信を捨てる

翻訳家になりたい人向け、考慮すべき点

翻訳家になりたいと考えている人は、実際に翻訳業界に足を踏み入れていないことから、メディアやネットから得た情報に基づく迷信を持ちがちです。

まず知っておくべきことは、翻訳家になるまでの道のりは正に多種多様、ということです。

以下の様なパターンはまずありません。

日本の四年制大学に入学

三年生から就活開始

内定獲得

新年度から

翻訳者デビュー

大学の翻訳学部に行っても同じです。

卒業と同時に翻訳者としてデビューできる人はゼロとは言いませんが、ごく稀です。

翻訳家として活躍している人は、翻訳以外の業界やセクターでの経験を積んでいる人がほとんどです。

また、日本以外の国での長期滞在経験などを経て少しずつ翻訳の世界に足を踏み入れていく人も多くいます。

そういう経歴の人の方がこの業界で生き残りやすい、とも言えます。

では、そういう経歴を持たない人が翻訳者を目指す場合、何に気を付けるべきか?

本投稿ではこのような翻訳家志望者に向けて、事前に決めておくことをお勧めするポイントを紹介します。


翻訳スクールや教材に投資する時間と金額

翻訳スクールや教材に投資する時間と金額

翻訳スクールや教材は基本的に、冒頭で述べた放浪歴を持たない翻訳家希望者が最もリターンを期待できる手段だと思います。

お金を払って知識とスキルを得る、というのは正攻法だと思いますが、気を付けるべき点があります。

それは、翻訳家志望者の最終目的は

翻訳家になること

であって、翻訳スクールで好成績を収めることではないからです。

当然のことですが、翻訳スクールや教材の販売会社は、自社の商品を購入することで翻訳家への道が開ける、と宣伝しています。

スクールに通ったり教材を購入するなら、投資する時間と金額を事前に決めておくことをお勧めします。

過去の投稿でも述べていますが、翻訳の世界では扱われる文書の種類も分野も無限と言えるほど多岐にわたります。クライアント側の好みも千差万別です。

一方、翻訳スクールで教えてもらえることには限界があります

基本的には、変な訳文を書かないためのコツをしっかり教えてもらえるとは思います。

英→日翻訳では特に、翻訳者を登録する前に実施するトライアルで日本語が厳しくチェックされます

ただ、特定のスクールで好成績を収めた人が、実際の案件でクライアントから高評価を受けるとは限りません。


専門分野

専門分野

本ブログ全体を通していつも言っていることですが、翻訳で生計を立てたいなら

専門分野を持ちましょう

過去の投稿でも説明しましたが、英語力は翻訳者の差別化に使えません

英語力をウリにすると、どんな分野でも合格ラインぎりぎりでこなす「何でも屋さん」と化します。何でも屋さんに回ってくる案件は非常に単価が低いものばかりになるので、

稼働時間がハンパないのに
売上は雀の涙

になる可能性が飛躍的にアップします。


ネット上の平均年収を鵜呑みにしない

ネット上の平均年収を鵜呑みにしない

翻訳者の平均年収は調べてもあまり意味がありません。

なぜなら、信頼のおけるデータが存在しないからです。

一般のフルタイム会社員は一社からのみ、労働基準法に準じて固定給をもらうので、収入のデータが業界ごと、職種ごとに集めやすいのです。一方、稼ぎのある翻訳者はほとんどがフリーランスで、しかも取引先を複数持っているので、日本国内外の国税庁のデータベースに侵入しない限り実際の数字は分かりません。

過去の投稿で説明した様に、翻訳者の年収は実力次第で¥0から¥1,000万超まで変化します

また、調査会社や業界団体から年収を尋ねられて正直に回答している翻訳者はあまりいないと思います。

ただ翻訳の場合、画家のように一作に付けられる価格が無制限というわけではありません。

また、人間が行う作業であることから、翻訳のみでの年収の上限は¥2,000万ではないかと思います。

文芸書の翻訳だと作品が売れるたびにコミッションが入ってくるのでしょうか?Dr. 会社員は単行本や映画・ドラマの字幕の翻訳はやったことがないので、これらの分野における翻訳者の著作権がどうなっているのかはよく分かりません。

訳本が売れるたびにコミッションが入ってくるのであれば、一般的な産業翻訳と異なり、翻訳に資産価値があると考えられます。

一般的な翻訳(いわゆる産業翻訳)では、一回納品して翻訳料を受け取ったら、以後同じ案件から翻訳料が入ってくることはありません

とにかく、ネットで出回っている翻訳者の平均年収データは、全体像ではなくごく限られたサンプルを参照したものが多いので、現実の一部だけを全体と思い込んでモチベーションを左右されないようにしましょう。


まとめ

まとめ

今回の投稿では、翻訳家志望者が抱えがちな迷信と、実際の翻訳業界との差について説明しました。

以上を踏まえたアドバイスも紹介しました。

  • 翻訳スクールや教材に投資する時間と金額を決める
  • 専門分野を決める
  • ネット上の平均年収を鵜呑みにしない

翻訳者の経歴は千差万別。一人ひとりがユニークです。万人に当てはまる「なるには」メソッドはないので、上記で紹介した点を頭の片隅に入れつつ、各自勉強に励むのみです。頑張りましょう。