かかわると面倒な展開になる翻訳案件

かかわると面倒な展開になる翻訳案件

翻訳の案件は千差万別です。

業界や文章スタイルなど、非常に多岐にわたるので、翻訳の案件を打診された際は、引き受ける前に自分が得意な分野やスタイルであるかを慎重に吟味する必要があります。

Dr. 会社員は自分の得意な分野以外の案件はほとんど受注しません。

さらに、自分の得意な分野の中でも可能な限り避けているタイプがあります。

基本的に、以下の二種類はほとんど絶対に引き受けません

  • 著者の「思い」が込められた文章
  • 校正前、出版前の論文

著者の「思い」が込められた文章

著者の「思い」が込められた文章

著者の「思い」が込められた文章は、解釈が困難です。

著者自身も何が言いたいのか分かっていないことすらあります。

よって、翻訳も困難(≒ 不可能)です。

こういう文章は、翻訳が得意な人ではなく、著者と気の合う人が訳すべきだとDr. 会社員は思っています。

そのため、Dr. 会社員はできるだけハードサイエンス系の案件を引き受けるようにしています。

ハードサイエンスの文章に著者の熱い思いが込められていることは、基本的にありません。

たとえ込められていたとしても、解釈に多様性はありません。

「1 + 1 = 2」の世界です。

一方、「思い」が込められた文章の例としては、マーケティングやエンタメ(小説、映画、ドラマ等)が主に挙げられるでしょうか。

こういった文章を訳すと、納品後にチェッカーやクライアントが手を入れまくった原稿が戻ってきて確認を依頼されることがよくあります。

この確認作業は無償であることが多いので、「思い」が込められた文章の翻訳は、そうでないものと比べてトータルの売上が下がる傾向があります。

大量に直しが加えられている場合、内容の多くは「改悪」です。

Dr. 会社員は、納品後に改悪された文章を無償で手直しする契約には署名していないので、改悪された訳文は、基本的に改悪された状態のまま再納品しています。

この工程は時間の無駄ですが、ブログのネタとして参考にはなると考えています。


校正前、出版前の論文

校正前、出版前の論文

Dr. 会社員は論文の日→英翻訳を日常的に受注しています。

しかし、論文の内容を問わず手あたり次第引き受けているわけではありません。

自分が正確に理解できる文章しか取り扱いません。

さらに、出版前の草稿状態の論文は
お断りしています。

草稿状態の論文は日本語が洗練されておらず、何が言いたいのかよく分からないことが多いからです。

論文を執筆する人のほとんどは、アカデミアの住人(大学教員)や、企業・医療機関・政府機関の研究員、臨床家です。

これの何が問題かというと、納品した訳文に対してとんでもないクレームを受ける確率が高い、ということです。

Dr. 会社員は実際に学術機関で勤務したことがある上、学術論文の草稿を数年翻訳していたので、この点を身をもって体験しています。

もちろん、「取扱注意」なのは、アカデミアの住人や研究員のごく一部です。

しかし、自分が書いた原文の質を無視して翻訳者を攻撃してくる、プライドや易怒性の高いクライアントが他の分野より多めであると、経験則から確信しています。

こういうクライアントに遭遇した場合、翻訳会社の多くは間に立って翻訳者を守ってくれますが、中にはクライアントと一緒になって翻訳者を攻撃してくる困った会社もあります

Dr. 会社員は数年前、(モンスター)クライアントからクレームを受けた英訳を第三者の目でチェックする依頼を受けたことがあります。

訳文はクレームを受けるほどの低品質ではなかった一方、クライアントからのコメントが翻訳者の人格を否定するような内容で、読んでいて不快になったことを覚えています。


まとめ

まとめ

今回の投稿では、Dr. 会社員が避けている、かかわると面倒な展開になる翻訳案件を一部説明しました。

翻訳者として数年経験を積んだら、手あたり次第に依頼を引き受けるのは止めた方が良さそうです。

数をこなして売上を伸ばすのではなく、効率を高めて売上を伸ばす方針に切り替えるのが得策です。

自分が自信を持って取り組める案件や気持ちよく取引できるパートナーを積極的に取捨選択することをお勧めします。