英語から日本語への翻訳では、日本語を全く解さないプロジェクトマネージャーやソースクライアントが関わるプロジェクトを引き受けることが頻繁にあります。
仕事を任せてくれるのはありがたい限りなのですが、面倒な展開になることが多々あります。
やはり、翻訳のプロジェクトには翻訳者以外にも対象の二言語をある程度使えるバイリンガルの担当者がいた方が、時間を無駄にせずに済む気がします。
目次
Google翻訳で逆翻訳
最近、Dr. 会社員が度々遭遇するようになったのは、納品後の和訳をわざわざGoogle翻訳やDeepLをはじめとするネットの無料翻訳マシンにかけて逆翻訳を試みるソースクライアントです。
そもそも、Dr. 会社員はほとんど和訳の案件を引き受けていない(日本語から英語が全体の8割程)ので、英語から日本語への翻訳がメインの翻訳者は、こういうクライアントに頻繁に遭遇しているのでは、と思います。
日本語から英語への翻訳で、翻訳マシンによる逆翻訳を通してQAチェックされたことは、今の所一度もありません。
日本語と英語のペアに限らず、どんな言語でも翻訳の案件の多くは、翻訳者への指示事項に
「機械翻訳の使用は禁止」
と明示してあります。
* ただ、内容が平易な文章や繰り返しが多い文章、(文章ではなく)句や単語の羅列の場合は、翻訳会社が指定した機械翻訳を使用するのが一般的になってきている様です(=ポストエディット)。
しかし何故か、この禁止事項には
「ただし、
ソースクライアントが品質管理に
機械翻訳を使用する場合は
この限りではない」
という論理的根拠に乏しい但し書きが付くようです。
英語から日本語だろうが、日本語から英語だろうが、とにかくこの二つの言語をペアとする翻訳で機械翻訳に頼ると、かなりの確率で利用価値のない文章が出来上がります。
しかも、言語の性質上、日→英、英→日ともに、自然な良い訳ほど逆翻訳が原文と大きく異なります(数字は除く)。
上記は、この業界である程度経験を積んでいる人なら誰でも知っていることです。
和訳の納品から数日後に、ソースクライアントから
「キミの和訳を
Google翻訳で逆翻訳して
原文と比較してみたんだけど、
ちょっと違うんだよね。
説明してくれる?」
といった質問が来ると、本当に、がっくりします。
仕方がないので、「ある英文を人間であるDr. 会社員が和訳した場合、その和訳をネットの無料翻訳ツールで逆翻訳すると英語の原文と異なるのは何故なのか」という疑問に答えるべく、長々とメールを書くわけです。
めでたく「送信」をクリックして説明文を送ったら、このクライアントから仕事を受けることは金輪際ありません。
頼みの綱のプロマネのはずが…
上記の様な事態が発生した場合、翻訳者としてはプロジェクトマネージャーに上手く立ち回って欲しいと願うわけです。
しかし、プロジェクトマネージャーも日本語が分からない場合が多く、何の助けにもならないことがほとんどです。
つまり、「適材適所」という概念を完全に無視したチーム構成でプロジェクトが迷走することになるわけです。
ただ、日本語を解するプロジェクトマネージャーでも、何故かソースクライアントの質問を丸投げしてくるだけの方が多い気がします。
「機械翻訳で英語を日本語にしたり、日本語を英語にしたりすると、商品価値のない文章になるんだよ」
と一言説明してくれれば済むだけの話なのですが…。
まとめ
今回は、日本語を解さないプロジェクトマネージャーやソースクライアントが関わる英語から日本語への翻訳プロジェクトにありがちな問題を紹介しました。
では、日本語を解するソースクライアントだったら問題は回避できるのか?という質問が上がるかと思います。
残念ながら、その質問への回答は、「いいえ」です。
これはこれで、また別の類の問題が発生するからです。
日本語を解するソースクライアントにありがちな問題は、過去の投稿で触れました。