TOEIC800、900点は、翻訳に流用できない

TOEIC800、900点は、翻訳に流用できない

英語と日本語を使う翻訳の仕事に就く上で、TOEICをはじめとした語学検定のスコアにこだわる必要はありません。

語学検定のスコアは、翻訳スキルに流用できません。

語学検定のスコアを
翻訳スキルと
同一視するのは、
台所用洗剤を
衣料用洗剤として
流用するようなものです

台所用洗剤を使って衣類を洗うことは、できなくはありませんが、衣類を洗う際にはやはり衣料用洗剤を使った方が良いのです。

語学検定のスコアと翻訳も同じで、語学力を測定する場合には語学検定のスコアを参考にすべきである一方、翻訳のスキルを測定するなら、翻訳に合わせた指標を参考にする必要があります。

確かに、語学検定のスコアを基に翻訳スキルのごく限られた一部を評価することはできますが、非常に断片的です。


翻訳スキルは語学検定で測れない

翻訳スキルは語学検定で測れない

Dr. 会社員が知る限り、実務に使える翻訳のスキルを測れる指標は、この記事を書いている時点ではありません。

翻訳用の検定は存在しますが、翻訳の実務で扱う文書のタイプやジャンルが多岐にわたるため、検定で出題された文章をきれいに訳せても、実際の現場で常にその水準の翻訳ができるという保証にはなりません。

もちろん、実践的な翻訳スキルを持っている人の多くは翻訳検定に合格するとは思います。

対照的に、翻訳検定は、合格している人が商品価値のある訳文が書けるという保証には、必ずしもならない気がします。


検定で分かることには限界がある

検定で分かることには限界がある

Dr. 会社員が今まで目にした例に基づくと、日本で実施されているものに限らず、英語から日本語への翻訳の検定に合格している人(資格を持っている人)の中には、以下の傾向がある和訳を書く人が割といます。

  • 原文の解釈は、文法的にほぼ完璧
  • 訳抜け、不要な追加がない
  • 訳文が不自然

この理由は、英語から日本語への翻訳検定の評価では実践よりも理論に比重が置かれているからでしょう。

試験では現場に近い状況を人工的に作り出すわけなので、この展開は自然なのかもしれません。

一方、日本語から英語への翻訳には、上記とは異なる傾向があります。

日本語から英語への場合、日本人が手掛けた英訳には直訳調の不思議な英文が度々見られる一方、英語ネイティブが訳した文章には、原文の解釈が間違っているものが見られます。

日本語で考えた内容を完全に英語に置き換えるのは無理なので、ある程度の逸脱は仕方ないのかもしれませんが。

英語から日本語への翻訳に話を戻します。

実際の翻訳の場では、業界関係者が読んで分かりやすい文章が求められます。

文芸翻訳や字幕翻訳では、一般人の読者や視聴者が読んですぐ分かる内容、ということです。

読みやすい訳文というのは必ずしも、一言一句を漏らさずに、文法的に正確に訳した文章ではありません。

むしろ、原文に忠実過ぎる翻訳は「読んでも意味が分からない」と批判されることすらあります。

とはいえ、原文と完全に異なる訳文を書くのは大問題です。

原文に忠実過ぎる翻訳が厳しく批判されがちなのは、英語から日本語への翻訳よりも日本語から英語への翻訳です。

しかし、英語から日本語への翻訳でも、原文に忠実過ぎて読みにくい訳文を目にすることはあります。


まとめ

まとめ

今回の投稿ではTOEIC800、900点等、語学検定のスコアは、翻訳スキルを測る際に流用はできない、ということを説明しました。

語学検定は語学検定、翻訳は翻訳。

共通点はあるものの、両者は別物です。

Dr. 会社員は語学検定で満点を取ったことはありませんが、語学検定のスコアが実際の言葉の運用力とどのくらい相関があるのかについては常に疑問を持っています。

もちろん、完全に無関係ということはないはずですが、「極めた暁には何ができるのか?」ということは日本で大学に通っていた頃からずっと気になっています。