SDL社の翻訳支援ソフトTrados Studio(トラドス)が気になるものの、価格高いことと、どの程度の効果が得られるのかが未知数のため、購入に踏み切れない人は多いと思います。
今回の投稿では、Dr. 会社員が実際にトラドスを日々の仕事で使用した上での意見を紹介します。
購入を悩んでいる方の参考になれば幸いです。
目次
高いと感じるうちはまだ要らない
Dr. 会社員の経験上、フリーランスで年間の売上が安定して200万円を超えない限り、購入を考える必要はないと思います。
一番安価なバージョンでも数万円するので、年収が低いうちは高リスクな投資となり、精神衛生上メリットが少ない気がします。
一方、年間の売上が1,000万円を超えていても、定期的に取り引きしている相手がいて、トラドスを使う必要がなければ、購入しなくてもいいと思います。
Dr. 会社員は日々の作業でトラドスを使っています。
実際に使用することで作業効率は30%くらい上がったような気がします。データを定量化して比較したわけではありませんので、感覚的な意見です。
あれば役立つ
トラドスは「あれば役立つ」翻訳支援ツールだと思いますが、「なくてはならない」存在ではありません。
凄腕の翻訳者は全員トラドスを持っている、というわけでもありません。
とはいえDr. 会社員は、翻訳業をビジネスと捉え、積極的に作業の効率化を図りたい人には自分の経験からトラドスをお勧めしています。
Dr. 会社員は、誰かに指示されてトラドスを購入したのではありません。
ある日ふと作業効率を上げたくなり、トラドスについて調べ、30日間の試用期間を経て購入に至りました。
Dr. 会社員はローカライズではなく、とある専門分野の日本語から英語への翻訳を主に手掛けています。
専門用語を頻繁に使うので、特によく使うものをトラドスの用語集「Termbase」に登録して、文書内の用語の使用が統一できるようにしています。
この機能は気に入っています。
SDL社のウェブサイトに日本語の説明もあります。
無料で使える英⇔和辞書はネットにたくさんあるのですが、微妙に意味が違うものが結構あるので、自分で作成した用語集を一番信頼しています。
英語の意味を確認するときは、英和辞典ではなく、英英辞典が一番頼りになります。
Trados購入→契約成立とは絶対ならない
応募を考えている翻訳会社の募集要項に「トラドス使用」と書いてあることが購入を考える動機であるなら、購入は必要ありません。
契約が成立してもない相手の希望に合わせて
自分がツールの費用を負担することは
お薦めしません
フリーランスは様々な面で搾取の対象になりやすいので、自分ができることと、できないことの間に明確なラインを引く必要があります。
トラドスを使わない案件は
山ほどあります
しかも、トラドスを購入してから使いこなせるようになるまで時間がかかりますし、使えるからといってすぐに案件受注となるわけでもありません。
トラドスを自らの意思で購入し、問題なく使用できるようになった時点で、たまたま取引先からトラドスを使う案件のオファーをもらった
という流れが理想です。
Tradosを指定されるには理由がある
トラドスを使用できることが応募条件、という会社(ポジション)と契約すると、特定のパターンの案件を依頼される可能性が高くなるのでは、とDr. 会社員は思っています。
特定のパターンとはつまり、以下の様な種類の文書です。
- 繰り返しの表現が多いマニュアルやカタログ
- 用語の統一が重視される、デバイスのインターフェース
- その他ウェブサイトなどのローカライズ
どちらかというと、文脈に沿って原文を理解するというより、単発で登場する繰り返しのフレーズや単語をひたすら訳していくことになるのではないでしょうか。
UI(ユーザーインターフェース)の訳、例えば「[次へ]をクリック」、「回答が終了したら[送信]をクリックしてください」、「商品番号[333]は現在入荷待ちです」といった表現や、カタログやウェブサイト、ニュースレターなどで繰り返し使用するマーケティング用のメッセージなどを、大量に扱うことになる気がします。
ですので、翻訳家を目指す人が一般的に思い描いている仕事内容とは少し異なるのではないか、とDr. 会社員は思うのです。